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答案置き場

司法試験の過去問の答案をアップしていこうと思っています。

平成14年 旧司法試験 民法

〔設問1〕

第1、(1)について

1、Bは、祖父から贈与により甲地の所有権を取得しており、Cは、甲土地の登記を有することにより、甲土地を占有している。

Bは、Cに対し、所有権(206条)に基づき、甲土地の返還請求を主張する。

2、これに対して、Cは、売買契約により甲土地の所有権を取得しているため、Bの請求は、失当であると反論する。以下その理由を示す。

(1)Aは、Cに対し、甲土地を500万円で売却している(555条)。

(2)Aは、上記売買契約の際、Bの法定代理人であると「顕名」(99条1項)をしている。

(3)本件売買契約当時、Bは、18歳の未成年であるため、親であるAの親権に服する(818条1項)。ゆえに、Aは、親権に基づき、子Bの財産について包括的代理権を有する(824条)。

もっとも、利益相反行為についてはこの限りでない(826条1項)。826条の趣旨は、子の財産保護と取引安全にある。

ゆえに、「利益が相反する行為」に当たるかは、外形的・客観的に決する。

親が子の財産を売却したとしても、売却利益は法的に所有者たる子に帰属する。本件売買契約は、外形的・客観的にみて、AB親子の利益が相反するものとは言えない。

ゆえに、Aは親権に基づき、本件売買契約の代理権を有する。

(4)Aは、妻と共同して本件売買契約を締結している(818条3項)。

(5)以上により上記結論に至る。

2、もっとも、A夫婦は、売却利益をAのDに対する債務の弁済に充てるために甲土地を売却したのであり、これは、子の利益保護を目的とする親権の趣旨に反する(820条)。

ゆえに、Aによる上記2(3)の代理権行使は、代理権の濫用であり無効である。

3、代理権濫用は。経済的利益の帰属について、本人の利益を図ることではなく自己の利益を図ることにあることから、心裡留保に類似している(93条)。ゆえに、相手方が権限濫用について「知りまたは知ることができた」場合には、93条を類推適用し、代理権濫用による無効を主張できる。

Cは、Aが売却利益を自己のDに対する債務の弁済に充てることを知っていた。ゆえに、Bは、Cに対し、代理権濫用による無効を主張できる。

4、以上によりBは、Cに対し、上記請求を行える。

第2、(2)について

1、BC間に契約関係は存在しないため、契約上の請求は考えられない。

2、本件売買契約は無効である。Bは「法律上の原因なく」Cの「財産によって」500万円の「利益を受け」、そのためにCには「500万円」の「損失」が発生している。

もっとも、Bは「法律上の原因」について善意であり(704条)、受け取った500万円は、AのDに対する債務の弁済により消滅しているため、Bの「利益の存する限度」額は0である。

ゆえに、Cは、Bに対して、500万円の不当利得返還請求を行えない(703条)。

3、また、Cの損害についてBに「故意又は過失」も認められない(709条)。

4、以上によりCは、Bに対して、500万円の支払いを請求することはできない。

尚、こう解しても、Cは、Aに対して不法行為等の規定によって500万円を請求することができるため、公平の観点からも問題ない。

〔設問2〕

1、Bは、Dに対し、不当利得返還請求権に基づき、500万円の支払請求をすることができる(703条)。以下その理由を示す。

(1)A夫婦は売却代金をBの教育資金に用いるつもりで甲土地を売却しており、かかる売却は代理権濫用とはいえないため、AD間の甲土地の売買契約は有効である(824条)。

Cは、「他人」Bの「財産」である甲土地売買代金により、債権弁済の「利益」を受けている。

(2)「成年」Bは、Aに対し、Aが親権に基づき管理している甲の売却代金の引渡請求権を有する(828条)。しかし、Aは、Dに対する債務の弁済により無資力となっている。ゆえに、BのAに対する売却代金引渡債権は不良債権である。

Bには、500万円の「損失」が生じている。

(3)Dの受益がなければBの損失も無かったことから、Dの受益「のために」Bに上記損失が発生している。

(4)不当利得は、当事者間の実質的公平の実現を趣旨とする。ゆえに、財産的価値の移動をその当事者間において正当なものとするだけの実質的・相対的な理由がない場合には、「法律上の原因」がないと解する。

債権者が他人の財産によって弁済を受けたことにつき悪意であれば、実質的・相対的に財産的価値の移動を正当化する理由がない。

Dは、甲土地の売却代金により弁済を受けていることにつき悪意である。ゆえに、Dの利得には「法律上の原因」が認められない。

2、以上により上記結論に至る。

以 上